捜査関係者への取材および関係者の証言を総合すると、男児が衝動的に遠方へ向かった理由と動機には、小学校最高学年ならではの複雑な心理的負荷が関わっていたことが見えてきました。
男児は普段から真面目で成績も優秀と評されていましたが、中学校進学を目前に控え、学習塾でのプレッシャーや家庭内での期待に対して息苦しさを募らせていた様子が伺えます。失踪直前には、模擬試験の結果や生活態度を巡って保護者との間で意見の食い違いが生じており、周囲に対して「少し遠くの場所でひとりになりたかった」という趣旨の心情を吐露しています。
児童心理学において、11歳から12歳という年齢期は、自己同一性の芽生えとともに親への依存と自立の間で激しく揺れ動く「前思春期」に位置づけられます。感情を言語化して親と対等に交渉するスキルが未成熟な段階では、ストレス源から物理的に距離を置こうとする逃避行動(フライト反応)が突発的に発現しやすい特徴があります。事件に巻き込まれる意図など毛頭なく、ただ精神的な圧迫感から逃れたいという純粋な防衛本能が、今回の広域移動につながった真相とみられます。