「熱中症は一度経験すると癖になる」という噂の真相を探ると、医学的には「熱中症にかかりやすい体質へ遺伝的に変化する」わけではないものの、生理学的・環境的な観点から「極めて再発しやすい状態に陥る」ことは紛れもない事実だと分かります。医療現場の臨床医や専門機関の知見によれば、再発リスクが跳ね上がる主因は主に3つの要素に集約されます。
最大の要因は、脳の視床下部に存在する体温調節機能の低下です。一度重度の熱ストレスを受けると、体温を一定に保つための司令塔である体温調節中枢が疲弊し、皮膚血流の拡張や発汗を促すシグナルが正常に働かなくなります。その結果、平時であれば何でもないわずかな気温上昇や湿度の変化に対しても、体熱を効率よく体外へ逃がせなくなってしまいます。
さらに見逃せないのが熱中症の後遺症と自律神経の深い関わりです。発汗や末梢血管の収縮・拡張をコントロールしているのは交感神経と副交感神経からなる自律神経系です。熱中症による重度の脱水と高体温は、自律神経系に強烈なダメージを与えます。自律神経のバランスが崩れると、汗をかくべきタイミングで適切な発汗ができなくなったり、逆に異常な冷や汗が出たりするなど、体温管理が破綻します。本人が「完治した」と思い込んでいても、体内では自律神経の機能不全が燻(くす)ぶり続けており、これが「癖になって何度も繰り返す」と感じる直接の引き金になっています。