かつて全国に広大な土地を持ち、莫大な家禄や株式資産を有していた五摂家ですが、現代の資産状況はどうなっているのでしょうか。結論から言えば、「個人の私有財産としての莫大な富はほぼ消失したが、文化財は公益法人化されて散逸を防いだ」というのが真相です。
1945年の終戦直後、GHQの指令によって実施された財産税(最高税率90%)と農地改革、そして1947年の華族制度廃止は、旧華族の経済基盤を根底から揺るがしました。かつて東京の一等地に構えていた広大な公爵邸の多くは手放され、公的機関の敷地やホテル、公園へと姿を変えています(例えば、旧近衛邸敷地の一部は現在の文京区目白台周辺などに痕跡を残しています)。
特筆すべきは近衛家の対応です。近衛文麿は戦前、歴代当主が集めた数十万点におよぶ国宝・重要文化財クラスの古文書や美術品を守るため、1938年に「公益財団法人 陽明文庫(京都市右京区)」を設立しました。私財から文化財を切り離して公益法人化したことで、戦後の苛烈な財産税によるコレクションの散逸を回避。藤原道長直筆の国宝『御堂関白記』をはじめとする貴重な歴史資料が、現在も奇跡的な完全状態で保存されています。