本作の凄みを決定づけているのは、主要キャスト陣による圧倒的な熱演だ。主人公の青年マクトンを演じたハン・ソッキュは、純粋さと凶暴さの間で揺れ動く繊細な感情を見事に体現。彼の哀切に満ちた表情と鬼気迫るセリフ回しは、当時の韓国観客の心を鷲掴みにした。
一方、ボスの愛人でありながら主人公と危険な情事に落ちていくヒロインを演じたシム・ヘジンも、圧倒的な存在感を放っている。浮遊感と悲壮感を漂わせる彼女の佇まいは、退廃的なノワールの世界観に忘れがたい華を添えた。二人の化学反応がもたらす緊張感こそが、この映画を単なる犯罪劇にとどめない奇跡の結晶へと昇華させたのだ。