長野県による「信州ツキノワグマ出没注意報」の発令を受け、茅野市役所庁舎内は連日、緊迫した空気に包まれている。事態を重く見た今井敦市長は幹部会議を招集し、市民の生命を最優先とする厳重な警戒態勢を敷くよう各部局へ直ちに通達を出した。
行政の役割は、単なる警告看板の設置にとどまらない。観光業が基幹産業の一つである茅野市にとって、山間部の風評被害を防ぎつつ住民の命を守るという判断は、極めて重い決断の連続だ。市庁舎の防災・危機管理担当部署では、深夜早朝を問わず寄せられる市民からの目撃証言をリアルタイムで精査し、全庁的な情報共有を急いでいる。
行政がここまで神経を尖らせる背景には、山の生態系の激変がある。堅果類(ドングリやブナの実)の凶作や実りの偏りが、冬眠前後の個体を人里へ押し流す直接の引き金となった。山と街の緩衝帯が消滅しつつある今、トップが下す初動判断のスピードが、そのまま市民の安全係数に直結している。