小林旭という人物の凄みは、単に高額なギャラを稼ぎ豪邸を建てたことではなく、絶望的な逆境から自力で這い上がった鋼の意志にあります。バブル崩壊前後に背負った負債総額は、公称および報道ベースで実に51億円にのぼりました。通常の感覚であれば自己破産を選択し、資産を法的にリセットするのが現実的な道です。しかし、小林旭は「借りた金は己の歌と身体で一円残らず返す」と宣言し、法的手続きに頼ることを頑なに拒みました。
ここから始まったのが、芸能史に残る壮絶な完済ロードでした。小林旭は1回あたりのステージギャラが数百万円から1,000万円超とも言われる興行力を武器に、全国の市民会館や地方劇場、ホテルディナーショーを年間数十本から100本近いペースで回り続けました。さらにパチンコ機器のタイアップ楽曲や版権ビジネス、自著の出版など、持てる才能とネームバリューをフル稼働させ、約20年以上の歳月をかけて利息を含めた巨額債務を完済に至らしめたのです。