コレクションの礎を築いたのは、明治期に関西財界を牽引した実業家・藤田伝三郎だ。明治維新に伴う廃仏毀釈や社会の激変により、寺院や旧家から無数の貴重な古美術品が海外へ流出しようとしていた時代、彼は私財を投げ打ってそれらを買い集めた。「国の宝を海外へ散逸させてはならない」という危機感と、純粋な美への渇望が原動力だった。
伝三郎とその息子たちが遺したコレクションは2,000点を超え、国宝9件、重要文化財53件を数える。驚くべきは、その質の高さと保存状態の良さだ。伝三郎の眼力は、単なる収集狂の域を遥かに超え、日本の美意識の根幹を後世へと手渡す文化的な防波堤として機能した。