起業家として実績を重ねていた岡田氏に、雷に打たれたような衝撃が走ったのは40歳を目前にした2013年のことだった。ある宇宙関連のカンファレンスに出席した際、宇宙空間に無数のデブリ(ゴミ)が放置され、このままでは人類が宇宙を使えなくなるという深刻な現実を知る。驚くべきことに、その解決に挑む企業は世界に一社も存在しなかった。
「誰もやらないなら、自分がやるしかない」——周囲の猛反対を押し切り、2013年5月、シンガポールでアストロスケールを創業。創業当時は宇宙工学の専門知識もなければ、航空宇宙業界のネットワークもない完全な「素人」だった。学者や技術者に熱弁を振るっては断られ、資金繰りに奔走する日々。それでも「宇宙の持続可能性を守る」という大義を掲げ、一人また一人と優秀なエンジニアを説き伏せていった。まさに破天荒な転身劇の裏には、泥臭いまでの情熱と執念が隠されていたのである。