サビで繰り返される「Ba-de-ya, say do you remember / Ba-de-ya, dancing in September」というフレーズ。この「バーディヤ(Ba-de-ya)」という言葉について、辞書を引いたりスラングの意味を調べたりした経験を持つリスナーは少なくありません。
このフレーズについても、アリー・ウィリスは制作中に強い違和感を覚え、モーリスに対してきちんとした英単語へ置き換えるよう何度も懇願したと告白しています。「バーディヤなんて辞書にも載っていない無意味な言葉(nonsense words)を残したままリリースするなんて耐えられない」と主張するアリーに対し、モーリスが言い放った言葉は、すべてのソングライターにとっての至言となっています。
「Never let the lyric get in the way of the groove.(歌詞の辻褄合わせでグルーヴを邪魔するな)」
言葉の意味にとらわれてリズムの跳ね感を損なうくらいなら、赤ん坊から世界中のあらゆる言語圏の大人までが一瞬で発音でき、笑顔で大合唱できる響きを選ぶ。この決断によって、「バーディヤ」は意味を持たないがゆえに、あらゆる感情や思い出を受け止める世界共通のポジティブな合言葉へと昇華しました。
歌詞全体の和訳を紐解くと、この楽曲は「過ぎ去った9月の熱い恋の夜を、12月の寒い夜に振り返って温かい気持ちを取り戻している」という構造を持っています。ノスタルジー(追憶)を扱いながらも、感傷的な湿っぽさに逃げず、圧倒的な祝祭感で包み込む――その中心に配置されたのが、まさにこの「バーディヤ」という呪文のようなスキャットでした。