本作が多くのリスナーを惹きつける最大の魅力は、緻密に計算されたパート割にあります。単に1番を男性、2番を女性が歌うといった単純な構成ではなく、二人の主人公の感情が交錯するようにメロディが受け渡されていきます。
Aメロ・Bメロの前半では、井上苑子の切なさを帯びたクリアな単独ボーカルからスタートし、続くフレーズで大森元貴が呼応するように歌声を重ねます。注目すべきはサビの配置です。1番のサビでは井上苑子が主旋律(メロディライン)を歌い、大森元貴がその下を支える下ハモ(一部で上ハモへシフト)を担当します。これが2番以降になると大森元貴が主旋律を取り、井上苑子が上ハモへと回るなど、主客がドラマチックに入れ替わります。
ラストサビでは両者の感情が爆発するように、主旋律とハーモニーが目まぐるしく交差します。お互いがロングトーンで異なる音程を保持しながら音量をコントロールしなければならないため、相手のパートを正確に把握していないと、どちらかの音程に引きずられて不協和音を生み出すリスクが高い構成となっています。