馬の最大の特徴ともいえる広大な視野は、頭部の両側面に飛び出すように配置された大きな眼球によって生み出されています。首を左右に振ることなく、水平方向に約350度という驚異的なパノラマ視界を確保しており、視界から外れるのは自らの体の幅に隠れるごくわずかな範囲だけです。
このような視覚構造を獲得した背景には、過酷な自然界を生き抜くための進化の歴史があります。野生時代の馬は、ライオンやオオカミなどの肉食動物に狙われる典型的な被食者(草食動物)でした。草原で頭を下げて草を食んでいる最中でも、背後や遠方から忍び寄る天敵の気配を瞬時に察知し、即座に逃走へ移る必要があったのです。
馬の眼球は陸生哺乳類の中でも最大級の大きさを誇り、わずかな光や草木の揺れ、微小な動きを広範囲で捉えるセンサーとして極めて高度に発達しています。