バイキング利用時によく囁かれる言説に、「定価の高い商品を集中して選べば元が取れる」というものがあります。しかし、取材を通じて明らかになったのは、この損得勘定こそが満足度を大きく下げる最大のトラップであるという点です。
洋菓子における原材料コストを分解すると、チョコレートやピスタチオ、純生クリーム、生フルーツを多用した濃厚なケーキほど原価率は高くなります。しかし、これらは同時に脂質と糖質の密度が極めて高く、味覚疲労と満腹中枢への刺激を急速に引き起こします。「高いから」という理由だけで重厚なオペラやタルトを連続して注文した結果、開始20分で胃もたれに陥り、それ以降の時間を苦痛の中で過ごす羽目になった利用者の失敗談は枚挙にいとまがありません。
また、「時間無制限が最もお得」という俗説にも注意が必要です。滞在可能時間が長い店舗ほど客の回転率が低くなるため、ビュッフェ台の回転が滞り、補充されたケーキが空気に触れて乾燥するリスクが高まります。適度な時間制限が設けられ、常に新鮮なポーションが供給される店舗の方が、結果として口にするスイーツの品質が高く保たれているという構造的特徴が存在します。