和泉流の大名家である野村家に嫁ぐことは、単なる家庭生活の始まりを意味しない。重厚な歴史と伝統を守る「万作の会」をはじめとする一門の切り盛りや、公演を支える関係者への細やかな配慮など、狂言師の妻には極めて高度な気配りと見識が求められる。
人間国宝である義父・野村万作の存在もあり、家庭内には常に芸に対する厳格な空気が漂う。その中で彼女は、家庭を「夫や子供たちが心から安らげる場所」にするべく、徹底した心配りを続けてきた。出しゃばることなく、常に一歩引いた立ち位置から家族を鼓舞するその姿勢は、まさに古き良き日本の賢妻そのものである。