本館の正面、観光客で賑わう「メルヘン交差点」の広場に威風堂々とそびえ立つのが、高さ5.5メートル、重さ1.5トンのブロンズ製「蒸気時計」だ。15分ごとに白い蒸気を勢いよく吹き上げ、ボイラーの力で奏でられる5つの汽笛が、ウェストミンスター・チャイムのメロディを港町に響かせる。
この時計の生みの親は、カナダ・バンクーバーのギャスタウンにある世界初の蒸気時計を製作した名工、レイモンド・サンダース。1994年、彼の卓越した技術と情熱によって海を渡り、この地に据えられた。時計の心臓部は精緻な電気式振子で作動しながらも、汽笛を鳴らす動力源には純粋な蒸気エネルギーを利用するという、ハイブリッドの精密工学が宿っている。
一見するとクラシカルなモニュメントに見えるが、真冬の氷点下でも凍結することなく、白い息を吐きながら力強く鼓動を続ける姿は、小樽の厳しい冬を生きる人々の不屈の精神とも重なって見える。時計がボッと太い蒸気を吹き上げる瞬間、周囲の旅人から自然と歓声が上がる光景は、この街屈指のシャッターチャンスだ。