ネット広告やインフルエンサーの投稿で頻繁に見かける「ダメージゼロ」「トリートメントで癖が伸びる」という言説。毛髪科学の見地から断言しますが、還元剤を用いて髪の内部結合を切断している以上、ノーダメージの髪質改善ストレートは存在しません。
「痛まない」と錯覚してしまう最大の理由は、アルカリ剤特有の「キューティクルの毛羽立ち」や「ゴワつき」が手触りとして表面化しにくいためです。しかし、髪の内部では確実にタンパク質の変性や結合の切断が行われており、見えないダメージが蓄積しています。
利用者が事前に知っておくべき髪質改善ストレートのデメリットは以下の3点に集約されます。
第一に、施術時間が非常に長い点です。弱酸性の薬剤はアルカリ剤に比べて浸透スピードが緩やかなため、1剤の放置時間が25〜40分ほどかかります。さらに、薬剤のパワーに頼れない分、水分量をコントロールしながら1スライス数ミリ単位で丁寧に通す熱アイロン工程が必須となり、トータルで3時間から4時間拘束されるケースが珍しくありません。
第二に、特有の残臭とカラーの退色リスクです。酸性還元剤として多用されるGMTやスピエラは特異な硫黄臭を持ち、施術後数日間はシャンプーのたびに濡れた髪から独特の匂いが立ち上ることがあります。また、酸の収れん作用や熱処理によってヘアカラーの染料が破壊され、毛先が2トーン近く明るく褪色してしまう現象も頻発します。
第三に、技術者による仕上がりの落差が極端に大きい点です。アルカリ矯正はマニュアル化しやすい一方、酸性ストレートは髪の水分保持率、アイロンのプレッシャー、微細な塗布スピードの差がそのままダイレクトに結果へ跳ね返ります。経験の浅い美容師が担当すると、「まったく癖が伸びていない」か、逆に「過度な熱圧で髪が死んでしまう」かの二極化に陥るリスクを孕んでいます。