杏の生い立ちを紐解くうえで避けて通れないのが、世界的映画スターである父・渡辺謙を中心とした家族構成と、昭和末期から平成初期にかけて一家を襲った過酷な家庭環境です。
当時の家族構成は、父・渡辺謙、母・由美子さん、2歳年上の兄(現・俳優の渡辺大)、そして杏の4人家族でした。名門私立・成城学園に通い、一見すると何不自由のない芸能人一家の幸福な家庭に見えましたが、杏がわずか3歳だった1989年、事態は暗転します。父・渡辺謙が映画『天と地と』の撮影中に急性骨髄性白血病を発症し、降板を余儀なくされたのです。
当時、白血病は不治の病と恐れられており、一家の精神的支柱であった大黒柱の命の危機は、残された家族を極度の精神的パニックへと突き落としました。報道各社の当時の取材記録や法廷証言によると、妻であった由美子さんは夫の延命と快復を祈るあまり、藁をもつかむ思いである新興宗教団体にのめり込んでいきました。これが、後に杏の思春期を完全に狂わせることになる巨額借金地獄の引き金となったのです。