アニメ『ポケットモンスター』でサトシの相棒として登場して以来、ピカチュウの声を演じているのは声優の大谷育江さんです。『ONE PIECE』のトニートニー・チョッパーや『名探偵コナン』の円谷光彦など、数々の国民的キャラクターを演じる大谷さんですが、ピカチュウの演技は声優業界でも類を見ない領域に達しています。
特筆すべきは、世界各国で放映されるアニメや映画において、ピカチュウの声は吹き替えされず大谷育江さんの声がそのまま使われているという事実です。多くのポケモンは海外進出時に現地言語に合わせて名前がローカライズされます(例えばフシギダネは英語でBulbasaur、リザードンはCharizard)。しかし、ピカチュウは世界共通で「Pikachu」と名付けられました。
番組立ち上げ当初、各国の配給会社からは「現地の声優で吹き替えるべきだ」という意見も上がっていました。ところが、大谷さんが吹き込んだピカチュウの喜怒哀楽、繊細なニュアンス、言葉を超えて感情がダイレクトに伝わる圧倒的な表現力を前に、各国の制作陣が「この声を差し替える必要はまったくない」と納得したという逸話が残されています。言葉の壁を越えるピカチュウの鳴き声は、まさに大谷さんの卓越した職人技によって成立しているのです。