分泌物の色だけでなく「形状」や「臭い」に明らかな異変が生じている場合、特定の病原体による感染症や炎症が進行している可能性が極めて高くなります。臨床現場で頻繁に特定される代表的な疾患と、その特有の兆候を整理します。
まず警戒すべきは、おりもの黄色塊が排出されるケースです。カッテージチーズや酒粕のようにポロポロとした白い塊はカンジダ膣炎の典型例ですが、黄色みを帯びた粘度の高い塊状物が出る場合、頸管部での強い炎症反応が疑われます。特に子宮頸管炎の症状では、子宮の入り口に細菌が定着し、膿性の黄色い粘液分泌物が塊となって排出される特徴があります。放置すると炎症が子宮内膜や卵管、腹腔内へと上行し、将来的な不妊症や子宮外妊娠の原因となるため軽視できません。
次に、おりもの黄緑色と臭いが明確に現れているケースです。鮮やかな黄緑色や泡状の分泌物が生じ、魚が腐ったような生臭い悪臭(アミンの臭い)や強い外陰部の痒み・灼熱感を伴う場合、トリコモナス膣炎が強く疑われます。これは肉眼では見えない原虫が膣内に寄生して引き起こされる性感染症であり、性交渉だけでなく浴場や下着を介して感染することもあるため、パートナーを含めた同時治療が不可欠となります。
また、特有の強い魚炭臭を発し、灰色から黄白色のサラサラとしたおりものが増える疾患に細菌性膣症があります。これは特定の性感染症ではなく、膣内の善玉菌である乳酸桿菌が激減し、嫌気性菌をはじめとする雑菌が異常増殖することで引き起こされる菌交代現象です。過度のストレスや過剰な膣洗浄が引き金となって発症します。
日本国内で感染者数が高止まりを続けているクラミジア感染症にも最大限の警戒が必要です。クラミジアは感染しても女性の約70〜80%が無症状かごく軽微な自覚症状にとどまります。わずかに黄色いおりものが増える程度で痒みがほとんどないため見過ごされやすく、気づかないうちに骨盤腹膜炎へと進行する事例が後を絶ちません。
さらに、40代後半以降の閉経期前後に見られるのが更年期萎縮性膣炎です。女性ホルモン(エストロゲン)の減少に伴い膣粘膜が薄く乾燥し、自浄作用が著しく衰えることで大腸菌などの雑菌が繁殖しやすくなります。この場合、黄色い膿のようなおりものに微量の血液が混ざり、黄色から茶褐色の分泌物や性交痛・違和感として自覚されます。