上杉昇の「若い頃」と「現在の姿」を比較した際、多くの人が受ける視覚的衝撃は否定できません。1990年代初頭、WANDSとして「もっと強く抱きしめたなら」や「世界が終るまでは…」を歌っていた時代の上杉昇は、長髪をなびかせたスレンダーな美青年であり、いわゆる正統派ビジュアル系・J-POPボーカリストの象徴でした。
しかし、現在の彼はネイティブアメリカンを想起させるヘッドドレスや重厚な民族衣装、顎髭を蓄え、体重も大幅に増大したヘヴィなロックスタイルへと変貌を遂げています。この劇的な変化を単なる「老化」や「不摂生」と捉えるのは、表現者・上杉昇の本質を見誤っています。
彼が敬愛するカート・コバーン(ニルヴァーナ)をはじめとする米国のグランジ/オルタナティブ・シーンでは、見目麗しいアイドルのような外見を維持することはむしろ欺瞞とみなされます。上杉昇は、作られたポップスターの皮を自らの意思で脱ぎ捨て、年齢とともに変化する自己の肉体をそのまま受け入れ、音響的な共鳴体として活用する道を選びました。体型が大型化したことで、肺活量と低中音域の響きは格段に厚みを増しており、ビジュアルの変貌はそのままボーカリストとしての強靭な進化に直結しています。