義勇のクールな態度の裏には、胸を引き裂かれるような哀しい過去が刻まれています。彼が放つ独特の哀愁や、他者と距離を置こうとする姿勢は、心理学でいう「サバイバーズ・ギルト(生き残った者の罪悪感)」に起因しています。
祝言の前日に鬼から自分を匿って命を落とした姉・蔦子(つたこ)、そして最終選別で自分を含む候補生全員を鬼から守り抜き、ただ一人命を落とした無二の親友・錆兎(さびと)。義勇は「自分は何も成し遂げず、ただ生かされただけの卑怯者だ」という深い自己否定を抱え続けてきました。
彼が着用している左右非対称の羽織は、姉の着物の赤茶色と、錆兎の形見である亀甲柄を半分ずつ縫い合わせたものです。自らが水柱として戦い続ける原動力でありながら、同時に自らを責め苛む十字架でもありました。「俺は水柱になっていい人間じゃない」「お前たちとは違う」という一見傲慢に聞こえる言葉は、柱たちを見下していたのではなく、「自分は他の立派な柱たちと肩を並べる資格がない」という痛切な劣等感の告白だったのです。