ジェリー藤尾(本名:藤尾薫紀/しげき)さんは1940年6月、中国・上海でイギリス人の父親と日本人の母親の間に生まれました。第二次世界大戦後の引き揚げを経て日本へ渡りましたが、混血児に対する差別や偏見が根強く残っていた時代、幼少期から少年期にかけては過酷な環境に晒され続けました。
荒れた青春時代を過ごし、新宿や銀座の繁華街で喧嘩に明け暮れる日々を送るなか、彼の運命を大きく変えたのがジャズやロカビリーとの出会いです。卓越したリズム感と英語の語感を武器にバンド活動をスタートさせ、水原弘さんに見出されて芸能界へ進出。1958年には日劇ウエスタンカーニバルでセンセーショナルなデビューを飾りました。
エルヴィス・プレスリーを彷彿とさせるワイルドな歌唱スタイルと愛嬌のあるキャラクターで人気を博し、映画『用心棒』(黒澤明監督)など俳優としても活躍の場を広げました。一見すると順風満帆なスター街道を駆け上がったように見えますが、その根底には常に「自分はどこから来て、どこへ行くのか」という根源的な居場所探しの葛藤が存在していました。