近年のグルメメディアやSNSのショート動画では、「高知のカツオは絶対に塩タタキで食べるべき」「タレは邪道」といった極端な言説が散見されます。しかし、土佐の食の歴史を知る漁師や割烹の料理人たちの見解は大きく異なります。
塩タタキが名物として台頭したのは、天日塩の精製技術向上や藁焼きの実演演出が観光PRとして普及した平成以降のことです。古くから高知の家庭や料亭で親しまれてきた本流は、生ニンニクやミョウガ、大葉、青ネギといった大量の薬味をどっさりと乗せ、特製の柚子ポン酢タレを叩き込むように馴染ませた「タレのタタキ」です。春の初ガツオのような赤身の清涼な酸味にはタレが抜群に合致し、秋の戻りガツオのような濃厚な脂には塩が引き立つという、季節や魚体の脂乗りによる明確な使い分けが存在します。
また、もうひとつの盲点が「日戻りガツオ」の存在です。一本釣りされたその日のうちに市場へ水揚げされるカツオは、身の弾力が餅のようにモチモチしており、一般的なチルド流通のカツオとは食感が根本から異なります。市内のおすすめ鮮魚店や和食ランチ店では、このモチモチした新鮮なカツオを刺身(タタキにせず生で切ったもの)で提供している場合があり、これに出会えたら迷わず注文すべき極上の逸品です。