オリンピックの起源を辿ると、紀元前8世紀頃にギリシャのオリンピア地方で始まった「古代オリンピック」に行き着きます。全能の神ゼウスに捧げる宗教儀礼として開催されていた古代の祭典は、参加資格がギリシャ語を話す自由民の男性のみに限られ、競技も全裸で行われるなど、きわめて神聖かつ閉鎖的な祭礼でした。
この古代の祭典を1500年以上の時を経て蘇らせたのが、フランスの教育者であり近代五輪の父と称されるピエール・ド・クーベルタン男爵です。19世紀後半、当時の社会情勢や教育改革に関心を寄せていたクーベルタンは、「スポーツを通じた青少年の健全育成と、国境を越えた相互理解による世界平和」を構想。特定の宗教や民族に縛られず、世界中の若者がフェアプレーの精神で競い合う国際総合競技大会として、近代五輪の歴史と理念を打ち立てました。
1894年に採択されたオリンピック憲章には、「スポーツを行うことは人権の一つである」と明記されています。古代五輪が神への信仰と特定都市国家の結束を目的としていたのに対し、近代五輪は人種・宗教・政治的信条の違いを超えた「平和の祭典」として根本から再定義された点に、最大の相違点が存在します。