八咫烏の起源を辿る旅は、日本最古の正史へと行き着く。『古事記』および『日本書紀』において、この鳥は初代天皇とされる神武天皇の東征神話で決定的な役割を果たした。
日向を発ち、大和を目指して進軍した神武一行。しかし、険阻な熊野の山中で行く手を阻まれ、濃密な霧と毒気に包まれて立ち往生を余儀なくされる。絶体絶命の危機に瀕した一行のもとへ、天照大御神と高皇産霊尊の命を受けて天から舞い降りたのが八咫烏だった。巨鳥は漆黒の翼を羽ばたかせ、険しい熊野の山道から大和の橿原へと軍勢を迷いなく先導したと伝わる。
名前に冠された「八咫(やた)」とは、親指と人差し指を広げた長さを基準とする古代の長さの単位「咫」に由来する。「八」は単なる数字の8ではなく「非常に大きい」という意味を持つ。つまり八咫烏とは、空を覆うほどに巨大で威風堂々たるカラスを指していた。