一般社会において「実際に手で書く機会がある漢字」の最高峰は、2010年の改定で常用漢字に追加された「鬱(うつ)」の29画です。
書く際の覚え方として「木・缶・木・一・火・ヒ・コ・彡」といった語呂合わせが広く親しまれていますが、文字の枠内に収める難易度は極めて高く、学校教育やビジネス文書の現場でも「読めるが手書きは敬遠されがちな文字」の筆頭となっています。
一方、日本漢字能力検定(漢検)1級の世界に足を踏み入れると、画数のハードルはさらに跳ね上がります。
漢検1級の標準的な配当漢字の中で最多画数を誇るのが、鹿を3つ書く「麤(そう / 33画)」です。「大まか、粗い」という意味を持ちます。さらに辞典レベルの異体字や旧字体を視野に入れると、龍を3つ重ねた「龘(とう / 48画)」や、龍を4つ並べた「𪚥(てつ / 64画)」など、規則的な多画数文字が姿を現します。
書道家や漢検チャレンジャーの間では、これらの文字を「毛筆のカスレを出さずに1マスの半紙に収めること」自体が高難度の技能訓練として楽しまれています。