午前8時。まだ街が眠りから覚めきらない時間帯から、厨房での静かな闘いは始まっている。店主自らが丸鶏の状態で仕入れる鶏肉と向き合い、部位ごとの繊維の走り方や水分量を指先で見極めながら、寸分の狂いもなく切り分けていく。串を打つ角度ひとつで火の通り方が劇的に変わるため、ミリ単位の調整に一切の妥協はない。
現在提供されている限定のおまかせコースは、まさにその緻密な仕込みの集大成だ。先附から始まり、串物、箸休め、そして締めのご飯物に至るまで、全体の抑揚が緻密に計算されている。淡白な肉質の串から濃厚な旨味を持つ希少部位へ、そして柑橘の酸味を効かせた小鉢で舌をリセットさせる展開は、まるで一本の映画を観ているかのような完成度を誇る。