更年期に差し掛かると、なぜこれほどまでに感情のコントロールが効かなくなるのか。その引き金を引いているのは、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な分泌低下です。閉経前後の約10年間(一般的に45〜55歳頃、早い人では40代前半のプレ更年期から)において、卵巣の機能は急激に衰退していきます。
脳の視床下部は、卵巣に対して「もっとホルモンを出しなさい」と性腺刺激ホルモン(FSH)を大量に放出して指令を送り続けます。しかし、疲弊した卵巣はそれに応えることができません。このフィードバックの不一致により、視床下部がパニック状態に陥ります。重要なのは、視床下部がホルモン分泌の司令塔であると同時に、心拍・体温・血圧・感情の起伏を司る「自律神経の最高中枢」でもあるという点です。
視床下部の混乱はダイレクトに自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを破壊します。交感神経が過剰に高ぶることで、脳は常に「戦闘態勢」や「強いストレスに晒された状態」と誤認し、些細な刺激に対しても激しい怒りや焦燥感を爆発させてしまいます。
さらにエストロゲンには、精神を安定させ幸福感をもたらす神経伝達物質「セロトニン」の合成・分泌を促す働きがあります。ホルモン急減によってセロトニンの血中濃度が著しく落ち込むため、怒りのブレーキが利かなくなるだけでなく、「理由もないのに情緒不安定になり涙が出る」「猛烈な孤独感や不安に襲われる」といったうつ状態に近いメンタルの変調が引き起こされるのです。