2020年代半ばを過ぎ、スクリーン越しの読書は完全に日常となった。しかし、その反動として「手触りのあるメディア」に対する熱狂的な回帰現象が起きている。神保町周辺の古書店街でも、特にサブカルチャー、映画、演劇、昭和の流行文化に強い棚を持つ店には、連日のように20代を中心とした若い層が押し寄せている。
紙のザラつき、古書特有のインクの匂い、そしてかつての所有者が残した書き込み。デジタルデータでは決して再現できないこれらの物理的要素が、効率ばかりを求められる現代人にとって、逆に「贅沢な時間」として捉え直されているのだ。