「入港予定日に港へ行ったのに、船が来ていなかった」「到着が予定より4時間も遅れて見送りができなかった」というトラブルは後を絶ちません。ネット上では「運航会社の不手際ではないか」といった声が散見されますが、そこには海事運行上のやむを得ない寄港地変更・入港遅延の理由が存在します。
第一の要因は、台風や低気圧の通過に伴う「風速・波高の制限」です。巨大な壁のような船体を持つクルーズ客船は風圧の影響を極めて受けやすく、風速が毎秒12〜15メートルを超えるとタグボートによる着岸支援が困難になり、安全基準上港内への進入が禁じられます。
第二の要因は、「瀬戸内海の潮流と狭水道の航行制約」です。瀬戸内海を通過するクルーズの場合、来島海峡や明石海峡の潮流ピークや航路管制、さらには水先人の乗船調整によって出港・入港時刻が前倒しまたは遅延することがあります。スケジュールが狂った結果、次の寄港地の受入枠に間に合わず、やむなく寄港をスキップする「抜港(スキップ)」が決断されるケースもあります。
予定表はあくまで「航海計画上の目安」であり、天候や潮汐によって数時間の変動は常に起こり得るという前提を持つことが、現場での失敗を防ぐ最大のポイントです。