ネット上の言説を観察すると、「アノニマスネットの反応と評価」は綺麗に二極化しています。SNS上では「独裁政権をサイバー攻撃で追い詰めるダークヒーロー」「腐敗した権力を正す現代のロビン・フッド」と称賛する声が散見される一方で、セキュリティ専門家や法執行機関からは「自己正当化されたサイバーテロリズムに過ぎない」と断罪されています。
現場を取材するジャーナリストとして指摘しなければならない最大の盲点は、「彼らの大義名分がどれほど正しく見えようとも、行われている行為の大部分は明確な犯罪である」という冷厳な事実です。DDoS攻撃によるサーバーダウンは日本の刑法では「電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)」に該当し、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。他人のサーバーへの侵入は「不正アクセス禁止法違反」です。
過去には手痛い「アノニマス逮捕事例とその後」が多数記録されています。最も有名な教訓が、2011年にアノニマスから派生した精鋭ハッカー集団「ルズセック(LulzSec)」の壊滅劇です。
同組織を率いていたカリスマ的ハッカー「Sabu」ことヘクター・モンセグールは、自宅でFBIに身元を特定されて拘束された後、減刑と引き換えに捜査協力者へと転向。仲間たちには秘密裏におとり捜査に協力し、IRCチャットでのログをすべてFBIに提供しました。結果として、イギリスやアイルランドに潜伏していた主要メンバーたちが次々と急襲され、芋づる式に逮捕収監される結末を迎えました。
さらに深刻なのは、ネット上の空気に煽られた一般の若者たちが被る被害です。配布された攻撃ツールを「悪を倒すゲーム」感覚でダウンロードし、ワンクリックでDDoS攻撃に参加した十代の少年たちが、IPアドレスから瞬時に警察に特定され、将来を棒に振る事例が世界中で後を絶ちません。リーダー不在の分散型組織だからこそ、末端の実行犯が使い捨ての駒にされ、すべての法的責任を一身に背負わされる構造的リスクが潜んでいます。