多くの家庭でさつまいもが重宝されている最大の理由は、「抗てんかん薬投薬補助さつまいも」としての使い勝手の良さです。特発性てんかんの治療では、1日2回〜3回、決められた時間に寸分の狂いもなく生涯にわたって薬を飲ませ続けなければなりません。苦味のある薬を吐き出してしまう愛犬に頭を抱える飼い主にとって、粘り気があり錠剤を完全に覆い隠せるふかしたさつまいもは、まさに救世主のような存在でした。
しかし、薬とさつまいもの組み合わせには、治療計画を狂わせかねない重大な盲点が存在します。
フェノバール服用中の犬の食事注意点
フェノバルビタールを主成分とする抗てんかん薬「フェノバール」は、犬のてんかん治療における第一選択薬として広く普及しています。この薬の代表的な副作用が「多食・過食傾向」と「肝機能への負担」です。フェノバールを服用している犬は満腹中枢が麻痺し、異常な食欲を示して太りやすくなります。
甘くて高カロリーなさつまいもを常用していると、あっという間に肥満が進行します。犬の投薬量は体重1kg単位で精密に計算されているため、肥満によって体重が増加すると血中有効薬物濃度が相対的に低下し、これまで抑えられていた発作が突如として再発(ブレイクスルー発作)する危険性が跳ね上がります。
コンセーブ犬投薬とさつまいもの相性
日本国内で広く処方されているゾニサミド製剤「コンセーブ」は、肝臓への負担が比較的少なく優れた抗てんかん作用を持ちますが、消化器症状(食欲不振、嘔吐、軟便)の副作用が報告されています。小豆大ほどの微量な蒸しさつまいもに錠剤を埋め込んで飲ませる程度であれば、胃粘膜を保護しつつ確実に服薬させられるため、非常に優れた相性を示します。
ただし、コンセーブを服用している犬に「薬を飲んでくれたご褒美」と称して、毎食後にスライスしたさつまいもを丸ごと与えるような習慣は絶対に避けなければなりません。胃腸の運動機能に波が生じ、薬の小腸での吸収速度にムラが生じる恐れがあるためです。