『乾杯』の真骨頂は、レコード音源にとどまらず、数々の伝説的ライブで進化し続けてきた点にあります。1992年の東京ドーム、2004年の桜島オールナイトコンサート、そして2015年の富士山麓10万人オールナイト・ライヴなど、巨大な野外空間において長渕剛氏がマイクを客席に向け、何万人もの大観衆が声を枯らして大合唱する光景は、日本のロック史における語り草です。
ツアーごとに大胆なライブアレンジが施されるのも特徴で、ある時はピアノ1本による壮絶な語り、ある時はブルースハープをかき鳴らすアコースティックバージョン、またある時は重厚なゴスペルコーラスを従えたスタイルへと、その表情を変え続けてきました。
この曲が昭和、平成、令和と半世紀近く愛され、名曲と言われる決定的な理由。それは、「歌い手と聴き手の人生が交差する余白」が残されているからです。友の旅立ちを祝う歌として生まれ、多くの人の人生の節目に寄り添い、数多の傷や挫折を受け止めてきたことで、楽曲そのものが聴く人それぞれの人生の物語を映し出す鏡となっています。