インターネット上では時折、「ドット絵は3Dモデリングに比べて開発コストが低く、手抜きである」といった誤解が見受けられます。しかし、ゲームグラフィックの制作現場において、これは明白な事実誤認です。
3Dモデリングの場合、一度モデルと骨組み(リグ)を構築すれば、モーションの流用やカメラアングルの変更が比較的柔軟に行えます。対して高解像度なドット絵のアニメーションは、角度が変わるごと、動作が変わるごとに1フレームずつ手作業でピクセルを描き直す膨大な工数が発生します。特に第5世代で全ポケモンに異なる動きを実装した労力は、現代の開発規模から見ても途方もないコストが投じられていたことが分かります。
また、現代のプレイヤーがドット絵に惹かれる理由は単なる懐古趣味にとどまりません。ドット絵が持つ「情報の抽象化」は、写実的なCGにはない独自のメリットを持っています。細部を描き込みすぎないことで、プレイヤーは自分の頭の中でモンスターの毛並みや温度感を補完する「余白」を享受できるのです。この認知的アプローチこそが、2026年現在もピクセルアートがインディーゲーム市場やアートシーンで根強い支持を集める本質的要因です。