昭和から令和に至るまで、アニメ史に残る悪役ランキングで常に最上位に挙げられるのが白イタチのノロイです。ネズミたちの数十倍の体躯を誇る白銀の巨体、赤く光る眼、そして知略と心理戦を弄して相手を精神崩壊へ追い込む残忍さは、当時の子どもたちに計り知れない恐怖を植え付けました。
ノロイの恐ろしさは単なる腕力にとどまりません。催眠術のような眼光でネズミの動きを封じ、仲間同士を疑心暗鬼に陥れて自滅を誘う心理誘導は、まさに知性を持った絶対的捕食者の姿そのものです。名優・大塚周夫による低く冷酷で狂気を孕んだ怪演が、このキャラクターの底知れない闇を決定づけました。主役ガンバを演じた野村道子のエネルギッシュな声との対比が、絶望的な格差をより鮮明に浮き彫りにしています。
この恐怖を極限まで増幅させたのが、日本アニメ界の巨匠・出崎統(でざきさとし)監督による映像革命です。緊迫したクライマックスで画面が静止し、絵画のような劇画調のイラストへと切り替わる「ハーモニー演出(止め絵)」、斜光が差し込む画面分割、波や炎の動きをリアルに捉える透過光の多用など、後のアニメ表現に多大な影響を与えた技法が惜しみなく投入されました。ノロイが白煙の中から静かに姿を現すシーンは、視覚と聴覚の双方から逃げ場のない心理的圧迫感を生み出しています。