『他人の関係』の核心に迫る上で欠かせないのが、作詞を担当した有馬三恵子と作曲を手掛けた川口真による緻密な世界観の構築です。当時の歌謡曲の主流であった情念たっぷりの「未練」や「涙」を歌うスタイルとは対照的に、本作では都会的で乾いた男女の関係性が淡々と描かれています。
「逢う時にはいつでも 他人の二人」という冒頭のフレーズに象徴される通り、この楽曲で描かれているのは、情熱を燃やしながらも互いの実生活やプライベートには踏み込まない大人の境界線です。歌詞の解釈としてしばしば「割り切った不倫関係」と捉えられますが、心理学的な側面から見ると、深入りして傷つくことを恐れるがあまり、あらかじめ「他人」というペルソナ(仮面)を被ることで自己を守ろうとする、痛切な孤独の裏返しでもあります。
制作当時、作曲の川口真はアメリカのソウルミュージックやR&Bのエッセンスを歌謡曲に落とし込み、跳ねるような16ビートと印象的なホーンセクションを構築しました。そこに有馬三恵子のシャープで無駄のない言葉が重なることで、泥臭さを排除したスタイリッシュな大人の名曲が完成したのです。