周囲に商業施設や観光名所があるわけでもない白河市郊外の集落に、なぜ平日・休日を問わず百人単位の客が吸い寄せられるのか。その最大の理由は、工業的な大量生産ラーメンとは対極に位置する、徹底した「手仕事の純度」にあります。
とら食堂の手打ち麺は、厳選した小麦粉に十分な水分を含ませる「多加水仕込み」が基本です。木炭灰から抽出した灰汁水をかんすい代わりに使っていた創業時からの知恵を受け継ぎ、極太の青竹に体重を乗せてリズミカルに生地を延ばしていきます。さらに包丁で手切りした麺を、熟練の職人が全体重をかけて丹念に手揉みすることで、独特の不規則なちぢれと凹凸が生まれます。茹で上がった麺を口に運ぶと、滑らかな舌触りとともにブルンと跳ねるような弾力が弾け、手打ちならではの力強いコシが喉を駆け抜けていきます。
この強靭な麺を受け止めるスープもまた、妥協なき素材選びの結晶です。丸鶏やガラ、豚骨をふんだんに用い、濁らせないよう温度管理を徹底しながら旨味だけを抽出した清湯(チンタン)は、芳醇な鶏油のコクと地元産の上質な醤油の香味が絶妙に調和しています。化学調味料に頼らず、素材本来の滋味を極限まで引き出した一杯だからこそ、飲み干したあとも舌に嫌な重さが一切残りません。遠路はるばる足を運んだ客の胃袋を完全に掴んで離さない本物の完成度が、何十年にもわたる大行列を支え続けています。