美術やデザインの道を志す際、誰もが直面するのが「武蔵野美術大学や多摩美術大学などの名門私立美大に進むべきか、それとも桑沢デザイン研究所を選ぶべきか」という比較検討です。学校種別としては「大学」と「専修学校(専門学校)」という法的な決定打があるにもかかわらず、なぜ半世紀以上にわたって両者はライバル関係のように語られ続けているのでしょうか。
最大の違いは、カリキュラムにおける「教養教育の有無」と「デザイン実践への密度」にあります。4年制美大では文部科学省の設置基準に基づき、一般教養科目や外国語、体育などの履修が義務付けられており、幅広い視野や文化的素養をじっくりと育む環境が整っています。これに対して桑沢デザイン研究所(昼間部・総合デザイン科)は3年制であり、一般教養を最小限に絞り、授業時間の9割以上を実技・専門科目と造形理論に充当しています。つまり、4年制美大生が教養科目を学んでいる時間も、桑沢生はひたすら手を動かし、デザインの課題と格闘し続けている計算になります。
また、偏差値という指標の有無も受験生の心理に大きく影響します。桑沢デザイン研究所は専門学校であるため、河合塾や駿台予備校などの全国模擬試験における偏差値は算出されません。そのため「偏差値がないから美大より入りやすいのではないか」と安易に誤解されがちですが、選考の実態は決して甘くありません。推薦入試や一般入試ではポートフォリオ審査や構想表現、面接が課され、倍率が実質2倍を超える年度も珍しくありません。形だけのペーパーテストではなく、造形に対する情熱と論理的思考力がシビアに測られるため、美大の入試実技対策を積んできた浪人生が不合格になるケースすら頻発します。