手のひらに水ぶくれができると、患部がパンパンに張って物が握りにくくなるため、「早く針で穴を開けて中の水を抜きたい」という衝動に駆られる人は少なくありません。ネット上でもいまだに「マメは潰したほうが早く硬くなる」という言説が散見されます。
しかし、形成外科や皮膚科の臨床医が口を揃えて指摘するように、手のマメを意図的に潰す処置は治癒を遅らせる最大の原因です。水ぶくれの中に溜まっている液体は、単なる体液の老廃物ではなく、組織の修復を促す細胞成長因子(EGFやFGFなど)を豊富に含んだ「浸出液」です。この液体は、自前の治癒成分で満たされた理想的な再生液にほかなりません。
水ぶくれの薄皮(表皮)は、外気中の雑菌や物理的刺激から無防備な真皮を守る「天然の無菌絆創膏」の役割を果たしています。これを針やハサミで破棄してしまうと、患部が直接外気に晒されて乾燥し、皮膚の自己再生プロセスが停止します。そればかりか、黄色ブドウ球菌などの侵入を許して化膿し、激しい炎症や蜂窩織炎(ほうかしきえん)へと悪化するリスクを背負い込むことになります。