ガイドラインで予防的ルーチンが禁止されているとはいえ、血塊が目視でき、水封部の呼吸性移動が停止して有効なドレナージが得られていない場合には、緊急措置としてミルキングが求められます。患者の安全を担保するためには、ミルキングの目的と正しい手順を論理的かつ厳格に順守しなければなりません。
臨床現場で用いられる主な手技には「徒手(用手)法」と、器具を用いた「ローラー鉗子によるミルキング」の2通りが存在します。安全に遂行するための具体的なステップは次の通りです。
【手順1:閉塞徴候の確認と適応判断】
排液の色調変化、液面振動(呼吸性移動)の停止、患者の胸部症状(呼吸苦、血圧低下、皮下気腫の出現)を総合的に評価し、真に閉塞が疑われる場合のみ手技を開始します。
【手順2:患者側チューブの愛護的固定(最重要)】
挿入部に最も近い側のチューブを、非利き手の指で完全に挟み込んで閉塞させます(クランプ動作)。この固定を行わないまま下方へしごくと、発生した強烈な陰圧が患者体内へダイレクトに伝播してしまいます。体内へ陰圧を波及させない「防波堤」を作る工程です。
【手順3:徒手またはローラーによるしごき】
利き手を用い、固定した指の直下から排液ボトル(下流)に向かって5〜10cm程度の短い区画を優しくしごきます。アルコール綿や潤滑ジェルを用いるとチューブ摩擦を大幅に軽減できます。専用のミルキングローラーを使用する場合は、ゴム管を過度に引き伸ばさないよう、低速かつ一定の力で転がします。
【手順4:段階的な開放と排液確認】
下流へ押し出した後、患者側の指をゆっくりと解放します。この際、陰圧の反動で組織を吸い込まないよう、急激にパッと離してはいけません。血塊が排液ボトル内へ移動したか、液面振動が再開したかを観察します。
看護手技ミルキングの注意点として、決して挿入部を引っ張らないこと、そして一度の手技で改善しない場合は無理に繰り返さず、速やかに主治医へ報告してドレーン交換や画像評価を仰ぐ姿勢が徹底されなければなりません。