作中で幾度となく放たれる「俺は不死身の杉元だッ!!」という咆哮は、作品を象徴する屈指の名台詞です。なぜ彼はこれほどまでに不死身の杉元 理由として語り継がれるほどの驚異的な生命力を誇るのか、その背景には生理学的な要因と、精神に刻まれた深い傷の両面が存在します。
日露戦争の激戦地である旅順攻囲戦・二百三高地において、第一師団歩兵第一連隊に所属していた杉元は、敵陣の最前線へ銃剣一本で突撃を繰り返し、鬼神の如き戦果を挙げました。銃弾を何発浴びても、銃剣で体を貫かれても立ち上がり、敵を屠り続ける姿から敵味方問わず「不死身」と恐れられたのです。
肉体的な観点では、頭部をはじめとする全身の古傷が影響しています。杉元は頭部に重傷を負っており、脳の一部が損傷したことで「死への恐怖」や「痛覚の抑制」が麻痺している可能性が作中でも示唆されています。激痛や死の恐怖によって人間が本来ブレーキをかける防衛本能が外れ、極限状態でも筋肉と闘争心をフル稼働できる身体構造になっていたのです。
精神的な観点においては、杉元佐一 梅子 過去と親友・寅次の戦死による「サバイバーズギルト(生き残った者の罪悪感)」が狂気の根底にありました。「自分だけが生き残ってしまった」「寅次の願いを果たし、梅子を救うまでは絶対に死ぬわけにはいかない」という強烈な強迫観念が、肉体の限界を超えた生命活動を維持させていました。不死身という異名は、輝かしい栄誉などではなく、血の滲むような罪悪感と執念が生み出した悲痛な防衛機制だったと言えます。