今注目を集めている 『伊勢物語』芥川を徹底解説!鬼の正体と和歌の意味・テスト対策について、多角的な視点をご紹介しています。
定期テストや古典の学習に役立つよう、原文と丁寧な現代語訳を対訳形式で掲載します。
原文現代語訳昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、かれこれ八年ばかりになりにけり。昔、男がいた。手に入れることができそうもない身分の女性に、何年も求婚し続けていたが、あれやこれやで約八年になってしまった。やうやう夜もすがら雨もいたう降り、雷も鳴りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓・胡籙を帯して、戸口に立ち、夜の明くるを待ちけり。しだいに夜通し雨もひどく降り、雷も鳴ったので、(男は)荒れ果てた蔵の奥に女を押し入れて、自分は弓と矢を入れる道具を身につけて戸口に立ち、夜が明けるのを待っていた。鬼ある所とも知らで、神さへ鳴り騒ぎければ、八千草の露も消えぬべし。はや夜も明けなむと思ひつつ立ち居たるに、鬼はや一口に食ひてけり。鬼がいる場所とも知らないで、雷までもが激しく鳴り響いたので、(女は)無数の草の露のように消えてしまいそうだ。(男は)「早く夜も明けてほしい」と思いながら立ったり座ったりしていたところ、鬼が早くも(女を)一口で食べてしまった。「あなや」と言ひけれど、神鳴る騒ぎに、え聞かざりけり。(女は)「ああ!」と叫んだが、雷が鳴り響く音で、(男は叫び声を)聞くことができなかった。夜も明けにければ、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けども、かひなし。すっかり夜も明けたので、(蔵の奥を)見ると、連れてきた女もいない。男は足を踏み鳴らして悔しがって泣いたが、どうしようもなかった。
文中の「かれこれ八年ばかり」の現代語訳は、「あれこれと約八年間」となります。男の執念の深さと、それほどまでに困難な恋であったことがこの一節に凝縮されています。