本作の舵を取る演出家・脚本家の岸本功喜は、従来のファンタジックな枠組みを大胆に解体し、再構築した。歴代の公演が培ってきた温かなメルヘンの情緒を尊重しつつも、今回のステージでは「個人の孤独と再生」という人間ドラマの陰影がより濃密に浮かび上がる。
決定的な違いは、舞台美術と光の設計にある。過度な装置に頼るのではなく、ミニマルな空間構成と緻密なプロジェクション、そして役者の身体性を融合させた動線が敷かれた。これにより、キキが飛翔するシーンの浮遊感は劇的なダイナミズムを獲得。同時に、魔法の力を失い自問自答する場面の静けさが、かつてない緊張感となって客席を包み込む。