コウイカの胴体に入っている白くて固い板は、正確には骨(骨格)ではなく、進化の過程で体内に取り込まれた貝殻の名残です。学術的には「イカの甲」や「内殻」と呼ばれ、主成分は良質な炭酸カルシウムで構成されています。
この甲の内部を電子顕微鏡レベルで観察すると、無数の微細な部屋が層状に積み重なった「多孔質ラメラ構造」を形成しています。コウイカはこの微小空間に入っている液体と気体の比率を浸透圧によって出し入れし、まるで潜水艦のバラストタンクのように精密な浮力調整の仕組みを働かせています。
海底付近をホバリングしながら獲物を狙うコウイカにとって、エネルギーをほとんど消費せずに水中で静止できるこの甲は、過酷な生存競争を勝ち抜くための超ハイテク浮力装置なのです。