聖書の中でヨセフの職業は、古代ギリシャ語で「テクトン(tekton)」と記されています。一般的には「大工」と翻訳されますが、当時のパレスチナ地方の建築事情を考慮すると、現代の木工職人とは少しニュアンスが異なります。
当時のイスラエル地方は木材が貴重であり、建物の多くは石や日干しレンガで作られていました。そのため、ヨセフの仕事は家具や農具の製作・修理にとどまらず、石積みの家屋建築や修繕など、多岐にわたる建設作業をこなす総合的な職人・ビルダーであったと考えられています。
ナザレの近郊では当時、大規模な都市建設が進んでいたセフォリスという町があり、ヨセフもそうした現場へ出稼ぎに出て日銭を稼ぎ、家族を養っていたという説が有力です。決して裕福ではないものの、確かな技術と誠実な労働で生計を立てていた庶民派の職人像が浮かび上がります。