台東区上野・御徒町エリアに足を踏み入れると、一般的な商業地とは異なる特異な空気感に気づきます。なぜこのエリアに、カレーマニアがわざわざ遠方から足を運ぶ名店が密集しているのでしょうか。その背景には、都市の成り立ちと密接に結びついた歴史的・経済的な2つの構造的要因が存在します。
第一の理由は、戦後から続くアメ横の存在と、御徒町が世界的な「宝石・貴金属問屋街」として発展した歴史です。昭和中期以降、インドやスリランカなど南アジア出身の宝石ブローカーやバイヤーがこの街に拠点を構えました。彼らの胃袋を満たすため、本国の香辛料や調理法に一切の妥協を許さない本場の料理人が招聘されたことが、御徒町のインド料理レベルを底上げした原点です。
第二の理由は、アメ横地下食品街に代表される強固なスパイス調達サプライチェーンです。世界各国の希少なスパイスやハーブが日常的に手に入る環境が整っているため、仕込みの鮮度とコストパフォーマンスにおいて他地域を圧倒しています。
現在では、伝統を受け継ぐ老舗と革新的な新世代店が鎬を削り、御徒町カレー激戦区の理由を確固たるものにしています。安易な日本人向けアレンジに逃げず、現地のスパイス配合をストイックに追求する姿勢こそが、感度の高い食通を惹きつけてやまない最大の原動力です。