5部の物語における最大の転換点であり、今なおファンの間で議論が絶えないのが「パンナコッタ・フーゴの戦線離脱」です。ヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島にて、ボスへの反逆を決意したブチャラティの小舟に、フーゴただ一人だけが乗ることを拒絶しました。
ネット上では長年、「パープル・ヘイズの能力が強すぎてバトルの展開作りに困ったため退場させられた」という説が都市伝説のように語られてきました。しかし、荒木飛呂彦氏が自著やインタビューで語った生の告白によれば、真相はまったく異なる人間ドラマの葛藤にありました。
当時、荒木氏は個人的な精神的苦痛や人間不信を抱えており、当初のプロットでは「フーゴがボスのスパイとしてブチャラティチームを裏切り、かつての仲間たちと殺し合う」という極めて過酷な結末を予定していました。しかし、執筆を進める中でチームの仲間同士が殺し合うという展開に荒木氏自身が耐えられなくなり、「裏切るのではなく、ただ恐怖と合理的な判断から舟に乗れなかった」という現在の形に変更されたのです。
この物語の欠落を美しく埋めたのが、後に上遠野浩平氏によって執筆された公式スピンオフ小説『恥知らずのパープルヘイズ』でした。残されたフーゴが自らの「後悔と心の傷」に向き合い、ジョルノが統率する新生パッショーネのために命を懸ける後日談は、ファンの間で正史に匹敵する傑作として深く愛されています。