味楽亭の閉店は、単に一軒の人気焼肉店がなくなったというニュースにとどまりません。これは、高度経済成長期から平成初期にかけて隆盛を極めた「昭和型・個人経営町焼肉」が直面している構造的危機の象徴と言えます。
飲食産業史および都市社会学の観点から見ると、新宿・歌舞伎町一帯は現在、東急歌舞伎町タワーの開業などを契機とした大規模な街の浄化・再編フェーズにあります。資本力を持つ大手飲食チェーンやインバウンド(訪日外国人)向けの高級業態が台頭する一方で、築数十年の建物を借りて大衆価格で煙を上げながら営業するスタイルは、防災面や家賃相場の高騰によって存続が極めて難しくなっています。
さらに深刻なのが「事業承継の壁」です。町焼肉の命とも言えるタレの仕込みや肉のトリミング技術は、長年の勘と過酷な労働に支えられてきました。後継者が育たず、店主の体力の限界とともに秘伝のレシピごと歴史に幕を下ろしてしまうケースが、都内全域で急増しています。
【プロの結論】昭和焼肉のDNAを味わいたい人が取るべき判断基準
かつての味楽亭のような体験を今から求めたい場合、どのような選択肢を取るべきなのでしょうか。食を愛する読者のために、明確な判断基準を提示します。
【味楽亭の追憶を求めて町焼肉巡礼に向いている人】
・肉のサシよりも「ニンニクと唐辛子がガツンと効いた濃厚ダレ」に白米を合わせたい人
・服や髪に煙の匂いがつくことを厭わず、赤提灯やガスロースターの熱気を愛せる人
・上野、鶯谷、浅草、三河島、蒲田など、昭和のコリアンタウンや町焼肉の面影を残すエリアを自ら開拓する熱量がある人
【向いていない・慎重になるべき人】
・無煙ロースターによる無臭空間や、落ち着いた個室での接待・デートを最優先したい人
・翌日に大事な商談や対面イベントを控え、強いニンニク臭を完全に避けたい人
・「味楽亭の看板」そのものが復活した店舗でなければ納得できない人(直系の復活店舗は現時点で存在しないため)