ネット上のまとめ記事やSNSでは、「元日本代表なら生涯安泰」「引退後は優雅な生活を送っている」といった誤解が根強く存在します。しかし、この言説には構造的な盲点があります。
フィギュアスケートは、用具代、貸切リンク代、振付料、海外遠征費などにより、トップレベルを維持するために年間1000万円以上の活動費が必要とされるスポーツです。五輪メダリストクラスであれば引退後も大型CM契約が継続しますが、そうでなければ現役時代に投じた莫大な教育投資をセカンドキャリアで回収することは極めて困難です。
さらに、引退後の指導者(コーチ)という道も平坦ではありません。日本国内に通年型スケートリンクは約50箇所程度しか存在せず、コーチのポストは飽和状態にあります。指導者として自立するためには、有望な生徒を集め、早朝や深夜の過酷なリンク練習に帯同し、遠征に付き添う過酷な労働環境に耐えなければなりません。「元スター選手だから引退後も楽に稼げる」というイメージは、ごく一部の成功例だけを切り取った偏った幻想に過ぎません。