HYの「Song for...」を語る上で欠かせないのが、作詞・作曲を手掛けた仲宗根泉自身の生々しい実体験です。数々のメディア取材やテレビ特番、自著などで本人が明かしている通り、この楽曲は彼女が高校生だった当時に交際していた恋人との別れと葛藤から生まれました。
当時、交際していた相手は大きな夢を抱き、沖縄の地を離れて東京へ旅立つことが決まっていました。まだ十代だった仲宗根泉にとって、海を隔てた遠距離恋愛はあまりにも過酷な現実でした。相手の夢を心から応援したい、背中を押してあげたいという純粋な愛情と、自分のそばからいなくなってしまうことへの恐怖、そして「行かないでほしい」とすがりつきたい本音。その狭間で激しく揺れ動く感情が、本作のインスピレーションの源泉泉となっています。
報道各社の過去インタビューによると、仲宗根泉は相手が旅立つ前、張り裂けそうな思いを抱えながら自宅のピアノの前に座り、流れる涙を拭うことも忘れてわずか数十分の間に一気にメロディと歌詞を書き上げたと述懐しています。作為的な言葉遊びや商業的な計算が一切介在しない、十代の剥き出しの感情が鍵盤を通じてピアノコードへと叩きつけられたからこそ、本作には聴き手の理性を飛び越えて涙腺を直撃する圧倒的な純度が宿っています。