1999年7月から9月にかけて、テレビ朝日系の月曜ドラマ・イン枠(毎週月曜20時)で放送された実写ドラマ版『笑ゥせぇるすまん』。当時、アニメ版で喪黒福造の声を演じた大平透氏の低音ボイスが国民的な認知を得ていた中、「実写化など不可能」と囁かれていた下馬評を覆したのが伊東四朗氏の起用でした。
劇中で伊東四朗氏が見せた姿は、特殊メイクに頼り切ることなく、卓越した表情筋のコントロールと口角の歪め方によって「あの笑顔」を完全再現したものでした。トレードマークである大きな口、鋭い眼光、そして指を突き出して放たれる「ドーン!」の決めポーズは、まさに原作漫画から抜け出してきたかのような威圧感を放っていました。当時のテレビ情報誌や制作発表の記録によると、原作者の藤子不二雄Ⓐ氏自らが撮影現場を訪れた際、「伊東さん以外に喪黒福造は考えられない」と太鼓判を押したという逸話が残されています。
ドラマの演出には、映画『十三人の刺客』などで知られる名匠・工藤栄一監督や、後に数々のヒットドラマを手掛ける片山修監督らが参加。コメディやお笑い要素に逃げることなく、原作が持つ人間の浅ましさや救いのないサスペンスを、重厚なフィルムライクの映像美で描き出しました。毎話登場するターゲット(顧客)役にも、佐野史郎氏、草刈正雄氏、遠藤憲一氏、松方弘樹氏、風間杜夫氏といった日本を代表する実力派俳優が集結。喪黒福造という不条理な存在によって日常を狂わされていくサラリーマンや名士たちの崩壊過程を、生々しいリアリティで演じ切りました。